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【パールサファイアの夜】11


「ハンギョン~このカルボナーラ美味しい~

今度作ってよ~」

カフェテラスでランチをしていたヒチョルは、

ハンギョンに向かって笑顔でおねだりする

コーヒーを飲んでいたハンギョンは優しく微笑むと

「味が分からないと作れないぞ」と言って口をあける


あーん


ヒチョルからパスタをもらったハンギョンは、

味を確認するかのように眉間にしわを寄せてパスタを味わっている


「ねっ・・・美味しいでしょ」

「ああ・・今度リョウクと研究してみるよ」


最近常連客となっているカフェテリアで

ヒチョルとハンギョンはすっかりふたりの世界を作り上げていた


あまりにも大っぴらに楽しそうに過ごす2人に

周囲の人達は呆れながらも見つめる瞳には優しさが溢れている


そんな2人の元にスーツに黒メガネの屈強な男性二人組がやってきた

「失礼・・・キム・ヒチョルさんにハンギョンさん・・少し御時間を頂きたいのですが」


ヒチョルは楽しい時間を邪魔されたために凄い形相で睨みつける

「俺・・あんたらに用事ないから・・邪魔すんなよ」

「ウチの主人がお話があるんです・・・ちょっとお時間頂きます」

黒メガネは有無を言わさずにヒチョルの体を触った

「あっ」

ヒチョルは抵抗する間もなくテーブルにバタリと倒れた

「ヒチョル~!!!!」

ハンギョンは自分の体に電流が流れるのを感じ

ヒチョルと同様にテープルにうつぶせに倒れた


2人はスタンガンで気を失っている間に車に運ばれていく


あまりにも突然の事すぎて周囲の人々も息をのんで見つめる事しかできなかった




その頃

パールサファイアの店ではギュリが新人の接客の相手役をしていた

ギュヒョンは間近で見る美人のオーナーに上がりっぱなし

会話も弾む事なくダメだしをたくさんもらっていた

「あのね~ギュヒョンは何が得意なの?」ギュリは困った顔をしながら聞いてくる

「俺は・・・うーん・・・しいて言えばゲームかな・・」

「オーナー・・ギュはオンラインゲームとか最新ゲームに詳しいですよ」

見かねたソンミンが助け話を出す

ギュリは、しばらく何かを考えてからギュヒョンに向かって言った

「それ・・・いいじゃない・・・最近女の子でもゲームオタクとかいるし

すごく詳しいなら絶対それを売りにするべきよ」

「え?」

「決まりだわ・・ギュヒョンの得意分野はゲームよ・・・ゲームキングで行きましょう」

「それだったらいくらでも話が出来るよね」ソンミンも笑顔で励ます

ギュヒョンは接客する自身が湧いてくるような気がして笑顔になってくる



「オーナー!!!まだいますか?」

支配人室からカンタが慌てて飛び出してきた

「どうしたの? ここにいるわよ」

「ヒチョルとハンギョンが連れ去られたようです」

「えっ? 何それ」

その場にいたホスト全員が一斉にカンタの方を向く

「今、ヒチョル達が立ち寄っていたらしいカフェテラスの店員から電話がきて

『おたくのホストと女性客がサングラスの男たちに拉致された』と」

「女性客って・・ヒチョル兄さん!!!!!」リョウクが小さく叫ぶと

全員の表情が一斉に凍りつく

「まさか・・・チェが・・・強行手段に出たとか・・・・」

ギュリの発した言葉にホスト達はギュリの顔を見つめる


「最近・・・チェ財閥がホスト業界に進出するって話なの

そしてあちこちの店からホストを引き抜いてるのよ・・・・」


「もしかしてこの間のVIPルームの新客って・・・くそっ気付かなかった」

カンタが悔しがって壁をたたく


「くそっ・・どうしたらいいんだよ・・」ドンヘがみんなを代表したように嘆いた



すると

カチャカチャ・・

キーボードを操る音がする


みんなが驚いて音のする方を振り向くと

リョウクが必死な顔をして、ノートパソコンを操っていた


「リョウク・・・何やってんの?」ギュリが不思議そうな顔をして聞いてくる


「ヒチョル兄さんの携帯に・・・GPS機能が付いてるんです・・・

ハンギョン兄さんが、ヒチョル兄さんを守るために付けたんです

今・・・居場所を探しています・・・・」

リョウクの説明を聞いてみんなは納得した


ヒチョルはその美貌から、ストーカーや思い込みの客の被害にあった事があった

その気にさせる接客ではないのに、ヒチョルの魅力に虜となった客の暴走が起こした事だった

その事件いらいハンギョンはヒチョルの携帯にGPS機能を付ける事にしたのだった



「わかりました!!!!!居場所が特定できました」リョウクが叫ぶ


「ウチの大事な従業員を拉致るなんて許せないわ!!!!!!

こうなったら直接乗り込んでやるっ!!!!」ギュリが綺麗な顔に怒りの色を浮かべて叫ぶと

「僕たちも一緒に行きます!!!!!!」ドンヘがギュリにむかって言うと

「俺も」

「僕も」と次々ホスト達が名乗りを上げてくる

その様子をギュリが頼もしそうに眺めて笑顔で答えた


「警察はどうしますか?」カンタが警察に届けるかどうかと聞いてきた

「多分命を取られる事はないと思うから・・・届は待ってて・・・・」


「支配人・・留守を頼むわ・・店はとりあえず臨時休業よ・・・

必ず取り返して来るから」

ギュリは勇ましい言葉を残して勢いよく店を出ていった
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【パールサファイアの夜】10


「おはよう~支配人はもう来てるかしら?」

開店準備をしているパールサファイアの店にオーナーのギュリがやってきた

「あっ♪オーナーおはようございます♪」リョウクが笑顔で挨拶すると

「リョウク!!!おはよう!!!」ギュリはその綺麗な顔に笑みを浮かべてリョウクの頭をなでた

リョウクはくすぐったそうに笑うと「支配人呼んできますね~」と走って行った


(すっげ~オーナーって近くで見ると超美人・・・)

横でテーブルを拭いていたギュヒョンはギュリの美しさに見とれている

ソンミンが店の奥から花瓶を抱えて出てくると、ギュリに気付いて

「あっオーナー・・・お久しぶりです・・ご無沙汰してました」笑顔で挨拶をする

「ソンミナ~元気そうね・・・良かったわ」ギュリも笑顔で答える

「今日はわざわざ店に来て・・・どうされたんですか?」

「うーん・・・ちょっと支配人に話あってね~

あっ・・・ソンミナ・・あなた引き抜き話なんて来てないわよね」

ギュリの言葉を聞いてソンミンはギュッと唇をかみしめてから

「僕はオーナーを裏切るわけないじゃないですか・・・・

今の僕があるのは・・・オーナーがお金を貸してくれたからです」と言葉を絞り出すように言った

ギュリは少し困った顔をしながら

「ごめん・・・ソンミナを信頼しているわよ・・・」と謝った


「オーナー!!!支配人が部屋に来て下さいって言ってます」

リョウクの言葉が聞こえてきて

「はーい今行くわ」

ギュリはその場にいるソンミンとギュヒョンに手をふると

奥にある支配人室に消えていった


「僕さ・・死んだ父さんの残した借金がすごくあったんだ・・・

学生だった僕にはとても払いきれない額の借金・・・・・

オーナーが肩代わりしてくれて・・・・

だから・・僕・・VIP接待の仕事も受けてるんだ・・・・」

ソンミンは辛そうに言葉を絞り出す

ギュヒョンは何も言えずにソンミンの手をそっと握った

「誰でも人に言えない秘密いくつかあるさ・・・

今はオーナーに返却するだけになったんだろう?」

ギュヒョンの言葉にソンミンは小さく頷く

「この店でよかったじゃん・・・」それだけ言うと

ギュヒョンはテーブル拭きの仕事を再開した





ガチャ

ノックもせずにギュリは支配人室に入る

支配人のカンタはいつもの事だから驚きもせずに笑顔で挨拶をする

「回りくどい事いわずに単刀直入に言うわ

チェがあちこちのホストクラブからホストの引き抜きを始めたらしいの

各店のナンバー2やナンバー3辺りがどんどん引き抜かれているわ・・・

うちは大丈夫なの?」

「今のところ変な動きもないですし・・引き抜き話があったら

ヒチョルもハンギョンもこちらには話は通します・・・そう言う所は義理堅いから

ソンミンもオーナーに借金があるから動かないとは思いますが・・・」

カンタは苦虫をつぶしたような顔をして答える

「全面戦争をしかけてくるのかしら・・・チェはお金あるから・・・

でも引き抜きって・・・倫理的にもムカつくわよね」

ギュリの言葉にカンタは思わず笑い出した・・・

「失礼・・・たしかに・・大事に育てたホストを横取りされるのはムカつきますね

ウチが開店した時にホストは全員素人でしたね・・・・

個性豊かな奴らばかりだったけど・・・

そのおかげでこの業界から仲間はずれにはされなかったですね」

カンタの言葉にギュリは力強くうなずく

「そうよ・・・後進の店はそれなりの特色を新たに打ち出していくしかないのよ・・

ウチのヒチョルとハンギョンには話は来てないのかしら」


「あとで出社したら聞いてみます・・・最近あいつら『同伴ゴッコ』が楽しいみたいで・・

多分今頃は女装したヒチョルと、いちゃこらしているんじゃないですか?」

ため息まじりにカンタが言うとギュリはケラケラと笑った

「本当にあの子達って面白いわ・・・それに本気で愛し合ってるし・・

ヒチョルはどんどん美しくなっていく・・・見てて飽きないわ」




その頃ヒチョルとハンギョンは、いつものカフェテラスにいた


「ヘックション」

「ヒチョルどうした? 風邪ひいたか?」

「ハンギョン~鼻水でた・・」

あ゛ーまったく・・・

ハンギョンは上着のポケットからテッシュを出すとヒチョルに渡す


ちーん


「ん? ハンギョンお前何見てんだよ!!!!俺の鼻かむのそんなに面白いか?」

「いや・・・何してもヒチョルは可愛いなって・・」

ハンギョンはニコニコしながら答える

ヒチョルは急に恥ずかしくなって

「バーカ・・・俺はいつでも可愛いんだよ・・」強い口調で言い放った

「俺の前だと特にね・・」ハンギョンはヒチョルの耳元で囁く

「・・・バ・・・カ・・・」ヒチョルは頬をそめて俯いた



そんな2人のやりとりを車の中から見つめる人物がいた

「シウォン様・・あの二人には誰を接触させましょうか・・・」

「自分で話を持っていく・・・ヒチョルだけでも引き抜きたい・・」

シウォンの口から思わず本音がもれる

先日ヒチョルを指名して接客してもらったが

まだ一度しか会っていないのに

すぐに会いたくなっている・・・・不思議な気持ちに自分でも驚いていた


まるで麻薬だな・・・ヒチョル・・・さすがナンバー1だ

自分の店に・・いや自分の元にずっと置いておきたい・・・

シウォンはカフェテラスにいるヒチョルを見つめて心の中で呟いた


チェ財閥のホスト業界への進出計画は着々と進んでいく
【パールサファイアの夜】9


「ヒチョル兄さん・・・大丈夫ですか?」

リョウクが心配そうに声をかける

バックヤードに戻ってきたヒチョルは水を一口飲むと

椅子に座り込んでいる・・・

新しい客と言う事でヒチョルは珍しく気を使って接客していた

「リョウク・・・あいつ・・シウォンどう思う?」

「あの人は頭いいですね・・・そして遊びに来たわけじゃないと思います」

リョウクの答えにヒチョルはため息をひとつついた

「俺も・・・思った・・遊びにきたようにしてたけど・・観察してたな」

ふたりの話している所にハンギョンが入ってきた

「あっ・・・ハンギョン・・・」

ヒチョルの疲れ切った顔をみてハンギョンは慌ててヒチョルに尋ねる

「お前・・・何かされたのか?」

「バーカ・・・新客だから接客疲れだよ・・・市長とは訳違った・・・」

そういうとヒチョルはハンギョンの胸に抱きつく

「ヒチョル・・・」

「しばらく・・・このままでいて・・・」

ハンギョンは困った顔をしてリョウクに助けを求める

リョウクは笑いながら

「さっきのお客さんの毒気にあたっちゃったみたいです・・・

ハンギョン兄さん大丈夫です・・・変な事はされてませんから

ただ・・・あのお客さんは・・・何かありそうな気がします」

「若くて社長してるって支配人が言ってたけど・・・」

「チェ・シウォンって名乗ってました・・・多分本名だと思います」


その名前を聞いてハンギョンは何か引っかかるものを感じた


チェ財閥の息子がシウォンって名前だった・・・・


ハンギョンの胸に抱きついていたヒチョルは笑顔を作ると

「ハンギョン・・・店終わったらアフターだからな・・・俺と・・・」と言うと

ハンギョンの頬にキスをして店に出ていく

その後ろ姿を見ながらリョウクが

「ハンギョン兄さんには言っておきます・・今日のお客さん・・・

ヒチョル兄さんの事を好きです・・見つめる目つきが違ってました」と呟いた


その言葉にハンギョンの顔がわずかに歪む

「なんでヒチョル兄さんとソンミン兄さんはVIP接待があるんですか? やめちゃえばいいのに」

リョウクの言葉にハンギョンは思わず苦笑した


「いろいろさ・・人それぞれには事情ってものがあるんだよ・・強制じゃないから」

ハンギョンはそう言うとリョウクの肩をたたいて店に戻って行った


これから何かがおこりそうな予感をリョウクは感じて不安いっぱいになる

「小さな幸せがあるだけでいいのに・・・それだけじゃダメなのかな・・」

リョウクは呟くと両手で頬をたたいて

「今日もあと少しで終わる・・・頑張ろう」笑顔を作って店に出ていった



【パールサファイアの夜】8


「ヒチョル・・・今日の客は市長の秘書からの紹介で、若いけど社長やってる人だそうだ」

部屋に入る前に支配人のカンタから耳打ちされた


(けっ社長かなんか知らねーけど・・・ここに来るって変態じゃん)

いろんな感情を心の奥に仕舞いこんでヒチョルは営業スマイルを浮かべて部屋に入って行った





シウォンは初めてこのような店にきたので

落ち着かずに部屋の中でキョロキョロとしていた

少年の様にドキドキしている自分に気付いて思わず苦笑をする

深呼吸をひとつすると椅子にゆったりと腰掛け直した・・・・


「失礼します・・・ご指名いただいたパールサファイアのヒチョルです」

声のする方に顔を向けると・・・・

そこには女性と見間違える程美しい青年が立っていた

「となり・・・いいですか?」

「ああ・・・どうぞ・・・」

青年の美しさに心を奪われたように

シウォンは何も言えずに息をのむ・・・・

ヒチョルは笑顔を浮かべると

「お名前は・・・ここでは何てお呼びすればいいのでしょう」と尋ねる

「あ・・ああ・・・シウォンだ・・・シウォンと呼んでくれ」

「シウォンさん? シウォン? どちらがお好みですか?」

「シウォン・・・でいい」

その言葉を聞いてヒチョルはニッコリと微笑むと

「シウォン・・何飲む?」

急にため口で接客してきた・・シウォンは驚いてヒチョルの顔を見つめた

「あんたがため口パターンを選んだから・・・」


(面白い・・・・)

シウォンは思わず笑い始める

「そこでなんで笑うんだよ」

ヒチョルが不服そうに唇を尖らせながら尋ねると

「いや・・・呼び捨てにされるのは久しぶりだったから・・・斬新だな・・・

ヒチョルはこんな接客してるのか・・・市長にはなんて?」

シウォンは笑いながら尋ねてきた

「残念ながら・・それは個人情報になるので話せない」

いたずらっ子の顔をしてヒチョルが答えると

シウォンはドキリとする

昼間にみた女性と同じ表情だ・・・・・

「ヒチョルは女装が趣味? もしかして昼間男性とデートしてた?」

え?

ヒチョルは予想もしていなかった問いかけに思わずギョっとする

ヒチョルの表情を見て確信をしたシウォンは

「すごい美人をカフェテラスで見かけたから

会いたい一心で探しまわったんだ・・・そうしたらここにいた」

口説き文句にも思える台詞を

女性なら誰でも蕩けてしまいそうな笑顔でサラリと言いのける


げっ・・・なんだこいつ・・・

ヒチョルは思わず自分と同年代のシウォンという客に興味を持ち始めていた


【パールサファイアの夜】7



「ヒチョル兄さん・・今日ご機嫌だね・・俺の見た中でMAXだよ」

ギュヒョンが開店の準備をしながらソンミンに言った

ソンミンは、さっきヒチョルが店に来た時の事を思い出して、クスっと笑う


ハンギョンが店に来た時にその場にいたみんなが驚いた

どこから見ても女性としか見えないヒチョルが一緒だったからだ

「今日は俺達~同伴ゴッコしてきたんだ~♪俺美人でしょ♪」


女装のヒチョルはとても美しくその場にいたみんなが目を奪われた

そして同伴ゴッコがとても楽しかったのか、ヒチョルはものすごくご機嫌だった


ソンミンはヒチョルがハンギョンと撮ったプリクラを見せてもらった

すごく嬉しそうに2人は映っている・・こんな笑顔のヒチョルは初めてみたかもしれない


(いいな・・僕も・・好きな人とデートしたい・・・プリクラ撮ってみたいな・・)

ソンミンが急に寂しそうな顔をした

それに気付いたギュヒョンは「ソンミナ・・・今日店終わったらアフターゴッコしよう」

え?

驚いてギュヒョンを見つめるソンミンに笑顔で「プリクラも・・俺が相手じゃいや?

まだヘルプの身分じゃ誘ってもダメかな」と言う


「ううん・・・いいよ・・・」恥ずかしそうにソンミンは笑うとバックヤードに走って行く

その後ろ姿を眺めながらギュヒョンは小さくガッツポーズをした・・・






「ヒチョル~なんか今日はご機嫌だわね~」

ヒチョルを指名する顧客が嬉しそうに言う

ヒチョルはずっとニコニコしながら客の相手をしていた

ヘルプで入っていたドンヘもいつもの態度と全く違うので

いつもこうならいいのに・・・と心の中でこっそり呟く


めずらしくヒチョル自身でその場を盛り上げていると・・・

「すみません・・ヒチョル兄さん・・」

ウニョクがヒチョルに耳打ちする

「VIPの指名・・・・それも新客?」ヒチョルは怪訝そうな顔をしてウニョクを見た

ウニョクは黙ってうなずく

「ごめんねぇ~指名入っちゃったから・・ウニョクとドンヘで我慢してね」

ヒチョルは美しい笑顔で客に挨拶をするとドンヘに「後頼む・・・」と囁いて席を立った



ヒチョルがバックヤードに戻ると、ハンギョンが心配そうに立っていた

「バーカ・・・そんな顔すんなよ・・新客って言っても紹介制だから・・・

誰かの紹介だろうから・・・」ヒチョルがハンギョンに向かって言う


「俺は・・VIP接待は辞めて欲しい・・」ハンギョンはヒチョルの耳元で囁く

「バーカ・・そんな顔すんなよっ!!!!今日は俺最高に気分がいいんだから

そのままのノリでちょっと仕事してくるからさ」ニッコリ笑いながらハンギョンの手を握る


周囲を軽く見まわして、ヒチョルは素早くハンギョンの唇にキスをする

「今日・・・店終わったら・・アフターだよ・・着て来た服で帰るからね」


ハンギョンに投げキッスをするとヒチョルはVIPルームに消えていった・・・


「ハンギョン兄さん・・・僕がヘルプで入りますから・・心配しないでください」

後から来たリョウクがハンギョンに手をふってヒチョルの後を追っていく



新しい客って・・・どんな男なんだ・・くそっ・・


ハンギョンは手のひらを握りしめると

壁を殴りつけて怒りを抑えようとしていた



ハンギョンの右手から血がうっすらと流れてくる・・・・





【パールサファイアの夜】6


「ハンギョン~♪ この特別ランチが食べたいな♪」

ハンギョンとヒチョルがいるのはメイン通りに面している

お洒落なカフェテラス・・・

まるでここだけ見るとパリにでも来たかのような風情の店だった


ハンギョンは同伴すると決めた時に

フレンチレストランを予約しようとしたが

ヒチョルにもったいないからカフェランチでいい・・と言われた

ヒチョルはある程度のお金を貯めたら今の仕事は辞めようと決めている

なのでホストの割には私生活は質素なものだった


自分の前に座ってメニューをあれこれと眺めているヒチョル

それも今日は「美女」に変装している

ハンギョンはもう愛おしくて愛おしくてデレデレ状態になっていた

道路に面しているテーブルで2人で見つめあっている姿は

まるで映画かなにかの一場面のように見える

周囲の人たちは美しいカップルの微笑ましい姿を

遠慮がちに見つめていた


「これ・・・チキンの上にかかってるアボガドソースが美味しい♪

ハンギョンも食べてみて~♪ ほらっ・・あ~んして」


あ~ん


「うん・・美味しいね・・チキンにあってる

俺のタンシチューも旨いぞ・・ほら・・あ~んしろ」

ヒチョルは恥ずかしそうに口をあける


ああああっなんて可愛いんだ

ハンギョンは思わず向かい合わせに座っているヒチョルの手を握りしめる


まるでパカップルのようにいちゃついている2人を見つめる人影があった


カフェテラスから少し離れた場所に停まっている高級車の中で

ヒチョル達の様子を伺いながら2人の男性が話をしている




「あの美人といちゃついているイケメンがハンギョンです・・・

パールサファイアのナンバー2ホストです・・・今日は同伴なんですかね~

妙にいちゃついてますが・・・彼の客層はキャリアウーマン系が多いですね

資料によりますと・・ハンギョンは元証券マンだそうで・・

経済関係には強いようです・・・彼の客は彼の魅力+仕事のアドバイスが目当てなようです」


話しかけられた男性はかけていたサングラスをはずすと

その精彩な顔を少しゆがめて質問をする

「そのハンギョンは・・引きぬけそうか? さっきの「モムチャン」のイトゥクは完全に大丈夫なんだろうな」

「イトゥクの方は、同僚のカンインと一緒の移籍は確約とりました・・・

ハンギョンの方は・・今調査中です」

「ナンバー1の方はどうなんだ・・・ツンデレでも客が離れないって聞いたが・・・」

「ヒチョルですね・・・彼は不思議な魅力があるようで

一度客になったらもう離れられないようです・・・彼とソンミンは特別にVIP接待があります」

「VIP接待?」

「VIPルームでの男性相手の接客です・・料金はかなり高くなるようですが

ヒチョルは某市長から某芸能事務所の代表までの顧客がいるようです」


「予約は入れられるか?ナンバー1に会ってみたいな」

「シウォン様・・もう予約はねじ込みました・・・今夜お会いできます」


シウォンと呼ばれた男性は車の中からカフェテラスを眺めている


ハンギョンと一緒にいる女性が気になって仕方ない

(綺麗だ・・・くるくると変わる表情が幼い子供みたいで可愛い・・)

そしてハンギョンの様子を観察しながら

(あれは・・・客との同伴じゃないな・・恋人だな・・・)


「車出してくれ」シウォンは運転手に告げるとカフェテラスを後にした
【パールサファイアの夜】5


ホストクラブ「パールサファイア」は

この業界では新参者の身分でありながら

ホストの質の高さと話術の巧みさなどで客の心を掴み

リピーター率も多く毎日盛況だった


支配人のカンタはオーナーに呼び出されて

関連会社にあたる芸能事務所の応接室で待たされていた


「ごめんなさい・・・待たせたわね」

パールサファイアのオーナーであるギュリが書類を抱えながら入ってきた

ギュリは祖父の遺産を相続してその財産でホストクラブを作った

もともとは芸能事務所を営む父親の元で帝王学を学んでいて

ゆくゆくは事務所の女社長として経営を継ぐ予定となっている

まずはホストクラブの経営を実験的に行うつもりで

もうけは度外視していたのだ


なので支配人のカンタは売り上げに関しての圧力はないので

気楽に店を仕切る事ができ、その雰囲気が余計にホスト達をのびのびさせることになっていた


「最近店のほうも評判あがってるわね~あちこちから褒められるわ」

「ありがとうございます・・オーナーがのびのびさせて下さっているので

それが良い結果に結びついてると思います」

カンタは自分よりも年下のオーナーに対して頭を下げる


ギュリはその美しい顔をつまらなそうにして囁いた

「あのね~変な噂を聞いたのよ・・チェ財団がね・・・

こっちの業界にも手を出すって・・・」


え?

チェ財団は学校から病院、百貨店にレストラン・・ありとあらゆる分野に手を伸ばし

それを成功させているソウルでもナンバー1の大財閥である

その財閥がホストクラブ経営まで乗りだしてくるとは・・・・


カンタは想定しなかった話に思わず絶句した


その姿をみたギュリは

「そうよね~みんな絶句するわよね・・なんでわざわざ水商売に

それもホストクラブよ・・・・」ケラケラ笑いながら言った


「そういえばオーナーはなぜホストクラブの経営を考えたのですか?」

カンタは前から疑問に思っていた事を聞いてみる

「私? ただ綺麗な男の子が好きなだけ~あと上手くいけば

本業の芸能事務所で使える子も発掘できるかな~って」

「オーナーが発案した出張ホストのイェソンですが・・すごく評判良いです

日本の旅行会社と提携しまして「イェソンと行く魅惑の慶州tour」が

レギュラー化されました・・・イルボンマダムに大評判です」

「彼はホストというよりも歌手として成功させたいわ・・慶州tourも

ディナーショーが評判だものね・・でもなんで日本人に受けるのかしら」

カンタも分からずにキョトンとしていたので

思わず2人は吹き出してしまっていた

「それよりもチェが乗り出すって事は・・・ホストの引きぬきがありそうよ

各店のオーナーはそれが一番心配だって言ってたわ・・・支配人気を付けてね」

ギュりは経営者の顔をしてカンタに強く言った


****************************************************************




「ハンギョン~今日は俺と同伴しよう~」

ヒチョルがリビングで新聞を読んでいたハンギョンに声をかける

「同伴? なんだ一緒に店に行ってるじゃないか」

何を言ってるんだという顔をしてハンギョンは新聞から顔をあげた


!!!!!!!!!!!!!!!!


「俺・・美人?」

ハンギョンの目の前に女性用の服を着てうすくメイクをし

長いウィッグをつけたヒチョルが立っていた

「ヒチョル・・・どうした・・・」

あまりの美しさにハンギョンは目を離せないでいる

「この間リョウクと買い物に行った時に、このワンピース可愛いって買っちゃった」

「ワンピースの下にはスキニーパンツをはくので、ヒチョル兄さんも普通に着れると思って」

リョウクがハンギョンの様子を見ながらニコニコ笑っている

「どこから見ても女性ですよ~これなら外でデートしても大丈夫です」

リョウクの言葉にハンギョンは顔が緩んでくる

「同伴しよ~客のふりするからさ~デートだとまずいだろう?」

「俺はデートがいい・・・大っぴらにヒチョルを俺の恋人だって世界中に宣言したい」

「バーカ・・・もう少し金貯めないと・・・今の仕事は辞められねぇ~んだよ

だから今日は同伴ゴッコで我慢しろよ」

(ヒチョルを俺の恋人だって世界中に宣言したい・・)

ハンギョンのこの言葉にヒチョルは嬉しくて、ハンギョンの胸に抱きついた


(ヒチョル兄さん・・やはりあなたは笑顔が一番素敵です・・・)

リョウクは大はしゃぎをするヒチョルを見て自分も嬉しくなる

そして2人の様子を微笑みながら見つめていた

【パールサファイアの夜】4

「リョウク~どうしたの? 今日は忙しかったからね・・疲れちゃった?」

店が閉店して、片付けに追われていたリョウクが

椅子で休んでいるとソンミンが声をかけてきた

「なんかボケーってしてるけど・・・」ギュヒョンも心配して声をかけてくる


「あっ・・なんか今日一日がすっごく長かったな~って思って」

リョウクは2人に心配をかけさせまいと笑顔を作って答える


「ヒチョル兄さんはさっさと帰ったんでしょ・・今日は僕のうちで一緒にご飯たべようね」


ハンギョンが戻ってきた事で、落ち込んでいたヒチョルに生気がもどり

めんどくさがっていたVIPルームの接客も楽々とこなし

店が閉まるとともに2人はさっさと帰宅していった


リョウクはヒチョルの部屋に居候をしている身の上だったので

遠慮をしてなかなか帰らずにいた・・・ソンミンがそれに気付いて声をかけてくれたのだった



「お前たちいつも最後まで残ってて・・助かるよ・・ありがとう」

支配人のカンタが3人に笑顔で声をかけると、リョウクに手紙を渡す

「リョウク・・・お前にいつものお客さんから・・昨夜は話が出来なくて残念だって

また来週くるからって言ってた」


リョウクは下っ端だったのでいつもあちこちにヘルプで入っていたが

老婦人のお客が1人ついていた

リョウクが亡くなった孫に似ていると言って指名してくれていたのだった

「ヒチョルの事でバタバタしていたからな・・お客さんはお前が走り回っている姿を

微笑ましそうに眺めていたよ」


カンタの言葉に申し訳ないとリョウクは手紙を大事そうに胸に抱えた


「いつもお前たちは片付けを手伝ってくれるから・・・今日だけ特別」

カンタは札束を数枚とりだすと3人に渡して

「これで朝ごはん食べてきなさい・・リョウクは部屋にはまだ戻れないだろう」


「うわ~支配人すげー!!!!ありがとうございます!!!!!」

ギュヒョンが飛びあがらんばかりに大喜びする

それを見たリョウク達は大笑いをした


「ギュ言った通りだろう? 見ている人は見ているんだよ・・日頃のおこないって大事だよ」

ソンミンの言葉にギュヒョンは大きく頷く


「今日のことは・・・他の人に内緒だからな」

カンタは3人にウィンクをすると さっさと帰れと手で合図をした・・・・








 ♪♪~♪~♪

「ヒチョル・・メールがきてるぞ」

ハンギョンの腕の中でまどろんでいたヒチョルは腕をのばして携帯をつかむ

「多分・・・リョウクから・・あいつ遠慮して戻ってこないつもり・・・」


久々に再会した恋人たちのすることは一つ

店が終わって速攻帰宅した2人は濃厚な時間を過ごす事ができた


今はベットの中でお互いの肌の温もりを感じながら余韻にひたっている


「ほんとにリョウクはいい子だな・・・連絡しなかったって俺怒られたぞ」

ハンギョンはヒチョルの髪をなでながら、店での事を思い出し苦笑していた


「うん・・・あいつは本当にいい子だ・・だからこんな仕事してもらいたくない」

ヒチョルはリョウクにメールを打ちながら本音を呟いた


「もう戻ってきていいよって返信したからね」

ヒチョルがいたずらっ子の顔をしてハンギョンを見つめる


「じゃあ・・リョウクが戻ってくるまでに・・」

ハンギョンは体を反転させるとヒチョルを抱きしめて熱い口づけをする

「・・・バ・・カ・・」

ヒチョルは潤んだ瞳をハンギョンに向けて囁いた







【パールサファイアの夜】3


バックヤードからヒチョルが戻ってくると

店にいる誰もがヒチョルのまとっている空気にドキリとする

彼の体中から醸し出されるフェロモンに魅了されてしまう・・・


ほとんどの客の視線を集めたヒチョルはまるで女王のように

自分のテーブルへとゆっくりと戻って行く


(歩いているだけで人々の視線を集めてしまう・・・やっぱりナンバー1なんだ・・)

ギュヒョンはソンミンのヘルプに入った席からヒチョルを見つめて思う


「ハンギョン兄さんが戻ってきたんだね」

ソンミンがギュヒョンの耳元に囁いた

「?」

「ハンギョン兄さんがフェロモンの原因だよ」

そう囁くとソンミンは自分の客にむかって

「ヒョリンちゃん・・・それでどうしたんだっけ?」

可愛らしい笑顔をむけて話を続けさせた





「ごめんね・・・俺・・また指名入っちゃった・・」

自分のテーブルに戻るとヒチョルは客の手をとって瞳を見つめながら囁く

さっきまでいた人物と同一とは思えないぐらい優しい瞳で話をする

客はこのツンデレにやられてしまう


「ジョンモ・・悪い・・VIP入ったから・・後は頼む・・・」

VIPと聞いてジョンモも少し顔を曇らせたがすぐに笑顔をもどして

「お前の指名・・あっちに2テープルあるから・・シンドンとウニョクで入ってくれてる」

「サンキュ・・挨拶してくる・・・」


(それにしても分かりやすい奴だよな・・ハンギョンが戻ってきたのか・・)

ジョンモは苦笑いしながらヒチョルの後ろ姿を目で追った

残された客はヒチョルに魅了されたままウットリとしていた





「ドンちゃん・・・ヒチョルさんって綺麗だね~

私達リアル女子も太刀打ちできないわ~」

ドンヘの客のキャバ嬢がヒチョルの姿を見ながらため息をつく

それを見たドンヘはニッコリと微笑みながら客の手をとって

「ヒチョル兄さんは美人さんだけど・・・

僕はルナちゃんとユリちゃんみたいな可愛い系が好みだな」


「ええ?そうなの~?嬉しい♪」

(ハンギョン兄さんが戻ってきたんだ・・・良かった・・)

ドンヘは心の中でほっとする




「リョウク・・ごめんな・・ありがとう」

ハンギョンがバックヤードに入ってきたリョウクに言うと

リョウクは少し怒りながら

「ヒチョル兄さんは・・・携帯を握りしめながら・・

心配でほとんど寝てなかったはずです・・・」と訴える


「うん・・・みんなに迷惑かけた・・後で謝っておく」

ハンギョンの言葉にリョウクは苦笑いをしながら

「本当にそうですよ・・ヒチョル兄さんが落ち込むと周囲がすごく迷惑します

ちゃんと毎日笑顔でいられるようにしてあげてください」

ハンギョンはリョウクの頭をなでると自分の指名客の待つテーブルに向かって行った


「いまから・・・VIPのヘルプか・・・おぢさんたちしつこいから・・大変だな

でも頑張ろう」

小さく囁くとリョウクはパタパタと走って行った
【パールサファイアの夜】2


リョウクは今日はドンヘのヘルプに入っていた

ドンヘはいつもヒチョルのヘルプに入るが、今日は久々の指名客がついた


「ドンちゃんごめんね・・・忙しくてなかなかお店に来れなくて」

ドンヘの客はキャパ嬢の2人

「お詫びにドンペリ入れちゃうから・・・」

「そんな・・・会いに来てくれるだけでも嬉しいですよ」

ドンヘがニッコリと微笑むと2人のキャバ嬢は「きゃ~」と歓声をあげる


リョウクは離れた席のヒチョルが気になって様子をうかがっていた

ヒチョルの性格をよく知っているジョンモがヘルプについているので

お客への対応はちゃんとこなしている

視線を感じてリョウクは店の隅に顔を向けると支配人が目で合図をしてきた

「すみません・・僕ちょっと抜けますね」

ドンヘと客に挨拶して支配人の元にむかう・・・・

「支配人・・なんですか?」

「ハンギョンが今、店に着いた・・着替え中だ」

ハンギョン兄さんが・・・やっと戻ってきた・・・


リョウクは急いでヒチョルのテーブルにむかった

「すみません・・ちょっと・・」

ジョンモが盛り上げている中

リョウクはヒチョルに耳打ちをする

「リョウガ~サンキュ」

ヒチョルがリョウクの耳元で小声で囁くと

「ごめん・・俺ちょっと席外すから・・・」

ヒチョルについている客はヒチョルの我儘はなんでも許してくれる

甘やかしのタイプが多かった。今日の客もその種だ

「すぐに戻ってきてね~」

「ごめんね・・俺のいない間ジョンモで我慢してて」

そしてすばやくジョンモの耳元に「悪ぃ・・・この場頼む」と囁くと

一目散にバックヤードに向かう



ハンギョンはロッカーの並んでいる部屋で着替えをしていた

母親が倒れたと弟からの連絡で飛んで帰ったが

ただの過労だった・・・なかなか帰省しないハンギョンを弟達が大げさに連絡したのだった


疲れた・・・

ハンギョンがぐったりとしていると

誰かが入ってくる音がした


「ハンギョン!!!!!てめえ~!!!!なんで連絡よこさないんだよ」

ヒチョルがハンギョンの胸倉を掴んでロッカーに体を押し付ける


「ヒチョル・・・」

ヒチョルの怒りに満ちた顔がすぐ目の前にある

ハンギョンは、ふっと思わず微笑んだ

「ハンギョン・・・てめえ~なんで笑うんだ・・俺心配したんだぞ」

目の前のヒチョルの瞳から涙があふれている

ハンギョンの胸はヒチョルへの愛おしさが溢れそうになり

その唇に口づけをしていた

「!!!!!!!」

ハンギョンからの濃厚な口づけにヒチョルは目眩をおぼえ

シャツを掴んでいた手から力が抜けてきて

いつの間にかハンギョンに力強く抱きしめられていた

唇が離れると

「ごめん・・連絡するヒマがなくて・・母さんはただの過労で大丈夫だったよ」

「バカ・・・バ・・カ・・本当に心配したんだから・・・」

ヒチョルの頬をつたう涙をハンギョンは唇ですくう

お互いに見つめあいながらもう一度唇を重ね合わせる

ヒチョルは自分の腕をハンギョンの首にまわしてより深く唇を重ね合わせた




名残惜しそうに2人の唇が離れると


「恋人同士の再会の挨拶は終わったか? 客が待ってるから早く行け」

支配人のカンタが苦虫をつぶしたような顔をして立っていた

「ヒチョル・・・店が終わったら・・時間空けといて」

ハンギョンの言葉にヒチョルは小さく頷いた

「ヒチョル!!!VIPルームの指名だ・・いつもの方々だから粗相のないように・・

ヘルプは誰を付ける?」

「リョウクで・・お願いします」

VIP室の指名と聞いてヒチョルは少し嫌な顔をしたが

ハンギョンに向かって最高の笑顔を残して店に出ていった


「まったくお前達は・・・ウチの店のナンバー1とナンバー2が

デキてるなんて・・・ほんとに・・・困ったもんだ」

「支配人・・すみません・・俺達は本気なんです・・・」

「せいぜいバレないようにしてくれよ・・ヒチョルの客はなんでもOKだけど

お前の指名に響くからな・・で・・ハンギョン・・お前・・首・・」

カンタの言っていることが分からずハンギョンは鏡をみた

すると

いつの間に付けられたのかハンギョンの鎖骨あたりにキスマークが付いている


ヒチョル・・・あいつ・・・


ハンギョンはため息をつくとマオカラーのシャツに着替えてキスマークを隠し

何事もなかったかのように店に出ていった

【パールサファイアの夜】1


ソウルの繁華街にあるホストクラブ「パールサファイア」は

この業界で異端児扱いされているオーナーが経営している異色のホストクラブだ

オーナーがオーナーならホスト達も変わりものが集まってきていた

しかし美形度率がとても高いのでそれなりの客もたくさんついていて

店はなかなか繁盛を極めていた





「ヒチョル兄さん・・今日もご機嫌斜め?」

開店準備をしながらギュヒョンがソンミンに尋ねる

テーブルを拭きながらソンミンはため息をひとつつくと

「ハンギョン兄さんが突然中国に帰っちゃったからね・・・」

「ねえねえ!!!ハンギョン兄さんは今日あたり戻ってくるって!!!!支配人が言ってたよ」

ふたりの会話にリョウクが割りこんできた、手には花瓶を抱えている


「ツンデレのヒチョルだから・・あんな態度とっても客の受けは凄くいい

羨ましいですね~!!!!!ナンバー1ホストは何でもありなわけ?」

ギュヒョンはリョウクから花瓶を受け取ってテーブルに飾った

「ギュ・・言い方にとげがあるよ」ソンミンに注意されて

ギュヒョンは不満げに口を尖らせた

「どっちにしても・・・俺達はヘルプから抜け出さないとな」

ギュヒョンの言葉にリョウクは笑いながら

「ウチのお客さんって変わった人が多いから・・みんな固定客ついてるじゃない」

「僕たちも頑張ればトップ狙えるよ」ソンミンも笑顔で答える



「ほらっ!!!!そこの3人!!!おしゃべりしてないで開店時間迫ってるよ」

「はーい」支配人に注意されて3人はあわてて次の準備に入った




「パールサファイア」が開店すると店は女性客ですぐに満席となる

今日もナンバー1のヒチョルの指名がひっきりなしにきていた

「うわ~今日もたくさん客が来てる~!!!!ヒチョル兄さんのヘルプ誰が入るの?」

店の裏側では弟達がどこのヘルプに入るかでもめていた

「適任のドンヘ兄さんは指名入っちゃった・・・ヒチョル兄さんのお客って変人が多いから

相手するの大変なんだよ~」ギュヒョンが泣きごとを言う


「俺がヘルプ入るから・・・心配するな・・」

みんなが声のする方を振り返るとジョンモが立っていた

「ジョンモ兄さん~助かります・・・今日もご機嫌斜めですけど・・・

ジョンモ兄さんなら大丈夫・・・良かった~」

「ヒチョルもあの態度・・あんなんで客が離れないのもすごいな」

ジョンモは裏からヒチョルの客扱いを見てため息をつく


客から話しかけられれば一応答えるけど、心ここにあらず状態で

何かをボーっと考えている・・・・

ジョンモは苦笑するとヒチョルの席にヘルプとして入った



リョウクはあちこちのテーブルにヘルプで入りながら

ロッカールームを気にしていた

ハンギョンが戻ったらヒチョルに知らせるように頼まれていたからだった

(ハンギョン兄さん・・連絡も入れないから・・ヒチョル兄さん心配でほとんど寝てないのに)

「リョウク~お酒まだ~?」

「はい~!!!!今持っていきます~」

ドンヘに言われて慌てて返事をする


「パールサファイア」の夜はまだ始まったばかりだ

「今日も1日頑張るぞ」リョウクは小さく呟くと

ドンペリを持ってドンヘの席へと戻って行った・・・・

【ボム事件その後~大学編】番外編 ジェイの憂鬱


「ジェイ~!!!!」

大学の構内を歩いていたジェイに誰かが声をかけてきた

振り向くとウィチョルが笑顔で立っている

「おうっ!!!!久しぶりだな~今日は練習はないの?」

ウィチョルは大学のバスケ部に所属していてレギュラー入りももうすぐだった

「今日は軽く練習終わって、もうオフなんだ・・・

ジェイ~ヒマだったら飯でも食わない?」

「そうだな・・お腹空いたかも・・・」笑顔でジェイは答えてウィチョルの頭を叩く

「お前・・・会う度に頭ボコボコ叩くなよっ!!!!!バカになるだろうがっ!!!!」

ウィチョルが叩かれた場所をなでながら文句を言う

「お前がいつの間にか俺よりもでかくなったから、叩かれても仕方ないんだよ」

変な理屈をこねながらジェイはウィチョルと食堂にむかって行った





「この間のライブ良かったよ・・・お前ら本当にプロっぽくなっていくよな~」

ウィチョルがカルビ定食を食べながらジェイに言うと

「毎回ライブ来てくれてるね・・・ありがと」ジェイが笑顔で答える

「そう言えばハンギョンがベースで入っただろう? あいつがベース出来るなんて

全然知らなかったから驚いたよ」

「ああ・・・高校の音楽でベースをやったことあって基礎は出来てたよ・・

あとはヒチョルのために・・・かなり練習したように思う」

ジェイのその言葉を聞いてウィチョルはクスクスと笑った

「本当に今のハンギョンの姿は想像できなかったな・・・

ジェイに昔のあいつの姿を見せてやりたいよ・・・本当に」


高校時代のハンギョンはプレイボーイで有名だった

そんなハンギョンがヒチョルと出会って

今ではすっかりヒチョル一筋になっている

ウィチョルは本当の恋を知って変わったハンギョンを

からかいながら応援していた


「ハンギョンが入ってさ・・・ちょっと大変なんだ」

ジェイが苦笑しながら話始める

「そう言えば、ジョンモとハンギョンの暗黙のバトルの間に挟まれて

すっごく大変だった・・・って言ってたよな」

「うん・・・ジョンモはまだヒチョルを諦めきれなくて・・・

でもハンギョンが入ってきただろう・・・」

「三角関係ってか?」

「そこまではいってないけど・・・ハンギョンは我慢してくれている

ジョンモもハンギョンの反応を楽しむのに、からかうだけなんだけど・・・」

「けど?」

「問題は・・・なんも気付いてない1名・・・」

「?」

「ヒチョルがさ・・・何かとハンギョンにくっつきたがってさ・・・

いつもジョンモに怒られて・・・ハンギョンに諭されて・・不貞腐れるんだ」


ウィチョルはその話を聞いて思わず吹き出した


「その不貞腐れた顔が・・・また・・・何とも言えずに可愛くて・・・

俺らすごく困る・・・」


その様子を想像してウィチョルは笑いが止まらない


「お前っ!!!!人ごとだと思って笑ってるけど・・大変なんだぞ・・こっちは・・」


「想像しただけで笑える~腹いたい~」

ジェイはむくれた顔をしてウィチョルを睨む

「悪い悪い・・しばらくはジェイも大変だな」

「ああ・・・・」

「ジョンモにハンギョン・・どっちもSだろ? それも「ド」が付くくらい

ヒチョルもSっぽいよな・・

そいつらに囲まれたお前って・・・やっぱM?」

「SでもMでもどっちでもないよ~!!!!!!」



(ヒチョルがどんどん可愛らしくなっていくのも悪いんだっ!!!!)

ジェイの憂鬱はしばらく続きそうだった



【月と子猫とハンギョン~番外編 6】 出会い


ここは・・どこ?


暗い公園に猫のチョルは捨てられていた

見慣れない場所・・気付くと野良猫達が自分を威嚇している

自分に起きている状況が把握できずにチョルはベンチの隅にうずくまっていた



「この子とても美人さんね~」

チョルはお金持ちの家の老婦人に飼われていた

老婦人はチョルの美しさをいつも客に自慢しているような人で

チョルは何不自由することなく毎日を退屈にすごしていたのだった

そしてその退屈さはずっと続くと思われていた・・・

ある時、老婦人の姿が数日見えなくなったと思ったら、知らない男たちに捕まって

公園にごみのように捨てられていた

老婦人は亡くなって遺産相続人達により、猫のチョルは邪魔者扱いされたのだ

そんな事はチョルには分からない


「お腹空いたな・・・」

チョルは空腹に耐えられなくなって、公園をふらふら歩いてみた

食べ物のありそうな所に行くと強そうな野良猫達がチョルを威嚇する

喧嘩や争いごとなどを知らずに生きてきたチョルにとって

同じ猫だというのに彼らは恐怖の対象でしかなかった


「俺・・・このまま・・ここでお腹空いたまま死ぬんだな・・・」

チョルはベンチの隅にうずくまって、うつらうつらしていた


「おい!!!!お前・・・お腹空いてそうだけど・・食うか?」

チョルは人間に飼われていたので人間の言葉は理解できる

突然に声をかけられたのでびっくりして相手を見つめた

すると声をかけて来た青年はニッコリと笑い

「毒なんか入ってないぞ~」

と言うと手にしていた肉まんを一口自分で食べてみせる

もう一度手で肉まんをちぎるとチョルの口元にもってきて

「お前・・・お腹空いてんだろ?」と微笑んだ


チョルは目の前の肉まんに思わずかぶりついた

そしてガツガツと夢中で食べていた

その姿を青年は笑顔で見つめている



それ以来

青年は公園でチョルを見かけると

自分の食べていたものを分けてくれるようになった

そしてチョル相手にひとりごとのようにいろんな話をするようになった


お兄さん・・・チョルはその青年をそう呼んでいた

お兄さんと過ごす時間がチョルにとって楽しみな時間となっていた

どんなに野良猫に意地悪されようとお兄さんの笑顔を見ると

チョルは自分も幸せな気持ちになっていた

自分からは何も話す事は出来ないけど、お兄さんの話相手として役立っていると

それだけで嬉しかった


人間と猫の不思議な友情が芽生えていたのだった


ある日

動物保護団体のメンバーがチョル達のいる公園にもやってきた

野良猫の保獲が目的でチョルも捕まってしまう

檻に入れられ車でどこかに運ばれるらしい・・・チョルは檻の中であばれた

「こらっ!!!大人しくしなさい・・あなたは美人さんだから野良じゃなくて

ちゃんとした里親をさがしてあげるから・・・怪我しちゃうでしょ」



お兄さんに会えなくなる・・・

チョルの頭にはその事がすぐに浮かぶ

お兄さんの笑顔がもう見られなくなる・・・そんなの嫌だ・・・


チョルが暴れた事により檻の扉が開いた

チョルはその隙間から外に飛び出した


公園に戻らなくちゃ・・・お兄さんが待ってる・・・


チョルはひたすら走った・・・公園に向かって・・・

走って、走って、走って・・・・


あと少しで・・公園に着く・・お兄さん待ってて・・・





ドン!!!!!!

「きゃー!!!!!!」

鈍い音がして人々の悲鳴が聞こえた




ハンギョンは公園で、いつもの猫を探していた

「あれ? せっかくおでん買ってきたのに・・・どこ行ったんだよ」

あちこち覗きながら公園を歩きまわっていたら・・・・


「ママ~猫ちゃん死んじゃったの?」

子供がべそをかきながら母親の手をひっぱっている

「車にはねられちゃったからね・・あれでは助からないわね」

「猫ちゃん可愛そう・・・」



まさか・・・・


ハンギョンは人垣が出来ている公園の入り口に向かって走って行った



あっ・・・・


そこには車にはねられてぐちゃぐちゃな姿になった猫の遺体があった


「こいつは・・・あの猫・・・」

ハンギョンの話をいつも聞いてくれた猫の変わり果てた姿がそこにあった


ハンギョンは黙ってその遺体を両手で抱きかかえると

公園の中に入って行った・・・・



お兄さん・・・

チョルは魂だけになっていた・・・ハンギョンのすぐ横にいる


ハンギョンはチョルの遺体を公園の中の桜の木の下に埋めた

ちょうど子供が忘れて言ったシャベルがあったので

それを使って穴を掘った

「お前・・・こんなになっちゃって・・・痛かったよな・・

可哀そうにな・・・成仏しろよな・・・・もう会えないのは寂しいけど・・」

ハンギョンの瞳から涙が落ちた



その涙をみたチョルは自分もお兄さんに会えなくなる事に悲しくなった



ああああ・・・神様・・・お願いです・・・

もう一度お兄さんに会いたい・・・お願いします・・・

俺を・・ニンゲンに生まれ変わらせて下さい・・・・

神様・・・お願い・・・・ニンゲンが無理なら猫のままでもいいから・・・




********************************************************



ここは・・どこ?


チョルは自分が子猫の姿になっている事に気付いた

俺・・・どうしたんだっけ?

この姿になる時に誰からか一カ月だけだよ・・と言われた気がした


神様? 神様が一ヶ月間猶予をくれたの?

子猫の姿でよたよたと歩いていくと目の前にハンギョンの姿があった


あ・・・お兄さん・・


ハンギョンはチョルの遺体を埋めた場所にしゃがんで手を合わせている



にゃあ~

チョルは必死にハンギョンの元に向かう

神様がくれたチャンスを逃さないように

もう一度大好きなお兄さんに会うために・・・・


ハンギョンが足元にいる子猫に気付いた

「お前もひとりなのか?」


そして子猫のチョルをそっと抱き上げてくれた




お兄さん・・・会いたかった・・・

チョルは思いのたけを込めて「みやぁ~」と鳴いた




*「月と子猫とハンギョン」第1話に続く

【月と子猫とハンギョン~番外編 5】 ドライブ後編


すっかり日も暮れて

釜山に向けて車を運転しているハンギョン

助手席の籠の中にいたはずのチョルはいつの間にか後部座席に移動していた


「チョル~? あれ? 後ろにいるの?いたら返事して・・・」

「・・・ハン・・・」


え?

チョルの人間の声がして

ハンギョンはあわてて車を脇に停め、後部座席を振りかえった


ゴクリ・・・ハンギョンは息をのむ・・・

チョルは人間の姿になっていた・・・ひざを抱えて小さくなって

その裸の姿を隠していた・・・・

昔は裸の姿を全然気にすることなかったのに

ハンギョンと愛し合うようになってから羞恥心が生まれてきたようだった


顔を赤く染めながらチョルは

「ハン・・・バカ・・・着る服どこにしまったんだよ・・・」と文句を言う

あっ・・・・カバン・・・トランクの中だ・・・


ハンギョンはあわててトランクからバックを取り出すとチョルの服を取り出す

「ハンのバカ・・・あっちむいてて!!!!!!」

チョルの着替えが済むとハンギョンは釜山のホテルにむかってアクセルをふかした





*************************************************************************






「ハン~!!!!!!朝だよ~美味しいもの食べに連れてってよ~!!!!!!」

眠っているハンギョンの横でチョルが大騒ぎをする

昨夜は久々のチョルとの甘い夜をすごしたハンギョンは

張り切り過ぎてまだ少し眠かったりする・・・

「チョル・・・元気だな・・・」

ハンギョンが目を開けると

目の前にチョルの顔があった・・・大きな瞳でハンギョンを見つめている

「チョル・・・おはよう・・」

ハンギョンはその唇に優しくキスをすると

チョルは恥ずかしそうに目を伏せた


ああああああっもう・・・可愛くて可愛くて・・・ダメだ・・


ハンギョンはチョルを強く抱きしめると、昨夜の続きをしようとすると・・・


ガリッ・・・

痛っ!!!!!!

チョルが鼻をかじった・・・「ハンのバカ」

ハンギョンは苦笑いをすると

「ごめん・・・美味しいもの食べに行こうね」とチョルの頬にやさしくキスをする

チョルはくすぐったそうに顔をゆがめると嬉しそうに微笑んだ



釜山の市場はどこも活気づいている

「そこのお姉ちゃん~可愛いね~ キンパ食べていきな~」

「おにいさーん・・・海鮮キムチおいしいよ~」

チョルはハンギョンの腕を掴んでキョロキョロと興味深そうに見回している

あっ!!!!

突然何かを見つけてチョルは叫んだ

チョルの指をさした先にはホットクの屋台がある

「ハン~!!!!あれ!!!!!テレビで食べてた!!!!!あれ食いたい」

屋台にはテレビの取材できた俳優の写真がたくさんはってある

「あ・・スンギの食べていたホットク屋さんが・・あれか・・・」

2人は行列の後ろに並んだ

同じホットク屋が数件あるのにテレビの影響は大きくて

俳優が食べた屋台が一番人気だった

チョルは今日は可愛いワンピースに下は水玉のハーフパンツをはいている

髪の毛もポニーテールにして、どこからみても美少女そのもので

チョルに注がれる熱い視線にハンギョンは心の中でパリヤーを張った

(チョルは・・・俺のものだ・・手を出すんじゃないっ!!!!!)

市場であれこれ食べた後に2人は小さな遊園地に行った

乗りものにのってしばらく遊んでから・・・


我慢に限界を感じたハンギョンがチョルに言った

「チョル・・ちょっと待ってて・・トイレ行ってくる」

ハンギョンはチョルをその場に待たせて走ってトイレに駆け込んだ

残されたチョルは寂しそうにその場をウロウロしていたら・・・


ドン!!!!!!


チョルは誰かとぶつかってその場に尻もちをついてしまった

『痛い~』

『大丈夫? 怪我した?可愛い子猫ちゃん』

見るとチョルに良く似た顔の青年が転んだチョルに手を差し出している

チョルはビックリして目を見開いたまま・・・フリーズ状態

トイレから出てきたハンギョンはビックリしてその場に走ってきた

「チョル・・大丈夫?」 チョルはコクリと頷いたのでハンギョンはホッとして

「こちらこそすみませんでした・・・」とお詫びする・・・

そして相手の顔をみて言葉を失った

チョルとそっくりの顔をしたハンギョンと同世代の青年が立っていた

そして・・・ハンギョンと同世代なのにロボット柄に水玉ハーフパンツという

幼稚園児が着るような服を着こなしている姿にも驚いた

「ヒチョル~どうした?」

「コンヒ~悪い!!!今行くから待ってろ!!!!」

青年の連れが遠くから呼びかけている

ヒチョルと呼ばれた青年はチョルにウィンクをすると

『子猫ちゃん・・・バイバイ』と去って行った



「チョル・・どうしたの・・何かされたの?」

フリーズ状態のチョルにハンギョンは心配そうに声をかけた

「今の人・・・猫語はなした・・・」

え?

「俺・・ビックリして猫語で痛いって言ったら・・猫語で返してきた

今別れる時も・・子猫ちゃんバイバイって猫語で言った・・・」

ハンギョンはチョルの猫語は理解できるけど話すことはできない

「じゃあ・・今の人って・・・」

「俺と同じ顔してたあのお兄さん・・・猫だよ・・」



***************************************************************

チョルは遊園地のベンチでハンギョンに寄りかかりながらポツリと言った

「俺・・・いつまでこんな状態なんだろう・・・神様・・・人間にしてくれないのかな」

ハンギョンは愛おしそうにその髪をなでながら

「人間でも猫でもチョルがチョルの魂を持っている限り・・・俺はチョルを愛しているよ」

「ハン・・・ごめんね・・・俺・・人間のメスに生まれ変わってくるって言ったのに

ハンの邪魔になってない? ハン・・・俺なんかよりも人間のメスと結婚すれば・・・」

「バカッ!!!」

突然ハンギョンが怒りのこもった声で怒鳴った

チョルはビックリして身をすくめる

「チョルが戻ってきてくれた・・それだけで幸せだって何度言わせるんだ!!!!」

チョルは大きな瞳から涙をながす・・・

「ごめん・・・なさ・・い・・もう・・言わない・・・」

ハンギョンはチョルをやさしく抱きしめて

「チョルが子猫でも人間でも関係ない・・ずっとそばにいてくれ・・・」

「うん・・・ずっといるから・・・ハン・・・大好き・・・・」


チョルはもうすぐ猫の姿に戻ってしまう

2人は残された時間を惜しみながら口づけを交わしていた



神様・・・・人間になりたいって言ったら・・我儘ですか?

チョルは心の中で呟いた・・・・
【月と子猫とハンギョン~番外編 5】 ドライブ中編


釜山まであと少しという所で

助手席のチョルの様子がおかしくなった

うずくまって小刻みに震えている

運転していて気付くのが遅れてハンギョンは驚いて車をとめた

「チョル・・・どうしたんだ・・」

チョルはハンギョンを見上げて大きな瞳で訴える

みゃあ・・・


あっ・・・

ハンギョンはチョルがトイレを我慢しているのに気付いた

部屋ではいつも便器の上でちゃんと用を足すチョルだから

籠の中に一応トイレシートは敷いていたけど・・・やはりそこでは出来ないか・・


「チョル・・・ごめんな気付かなくて・・・」

ハンギョンはチョルを抱きかかえると道端に離した

「見てないから・・しておいで・・・」

チョルは恥ずかしそうに草むらの中に入って行った


みゃあ~

すっきりした顔でチョルが戻ってきた

近くの水道で足を洗ってあげて抱きかかえる


みやぁ~

チョルが鳴くので頭を上げるとソフトクリームの店が目に入った

「お前・・・食べたいのか?」

ハンギョンがチョルを見つめるとチョルは一生懸命に瞳で訴えていた

(食べたいよ~一口でいいから~)

ああ・・・チョル・・そんな瞳で俺を見ないで・・可愛すぎるよ・・・


ハンギョンは子猫のチョルを抱えてソフトクリーム屋に向かって行った




「今日はヒマね~」ソフトクリーム売り場のシニョンが呟いた

「こんな田舎に突然イケメンなんて現れないわよね」同じアルバイトのヒョリンが呟く

「あっちの海産物売り場よりも若い人が来そうなのに・・客はガキばっかり」

「あたしたちの休みはこうやって潰れていくのね・・・都会に行かなきゃ出会いはないかな~」

2人がふと外を見ると

ちょっと地味だけど良く見るとイケメンの男性が1人こっちに向かって歩いてくる

「ちょっとちょっと・・・イケメンみっけた~」ヒョリンが囁く

「まじ・・イケメン・・・ソフトクリーム買いに来たのかな」シニョンはそう言うと

鏡で自分の顔をチェックする


「いらっしゃいませ~」アルバイトの2人は精一杯の笑顔でハンギョンを迎えた

「ソフトクリームをひとつ下さい」

「お味は何になさいますか?バニラにチョコにミックス・・当店自慢のゆず味もありますけど」

ハンギョンはメニュー表をみて悩んでいた

そして急に「バニラとチョコとミックスとゆずとあるんだって・・どれがいいの?」と言った

シニョンとヒョリンは突然何を言い出すんだろうと驚いたが

良く見るとこの男性は胸に抱えていた子猫に向かって話しかけていた

子猫は血統書がついていそうなくらい綺麗な猫で

瞳が大きくとても可愛らしかった・・・・

にゃあ・・にゃあ・・

子猫が男性に話しかけているとしか思えない鳴き方で返事をする

「バニラでいいの? あとでミックスが食べたかったなんて言わないでね」

まるで猫の言葉が分かるかのように男性は答えている


うそ・・・

子猫と男性の様子をみていた2人は・・・ちょっと後ずさりする


にゃあ・・・

子猫は一声鳴くとミックスの写真を前足で叩いた

「でしょ・・・最初からミックスって言えばいいのに」と男性はくすっと笑った


その笑った顔はとてもイケメンだった・・・・が・・・

子猫と普通に話ている姿に・・・ヒョリン達はドン引き状態・・・


「ありがとうございました・・・」

ハンギョンが店から出ていくと


「あんな・・・イケメンなのに・・・いっちゃってたね・・・」

「子猫可愛かったけど・・・恋人みたいに扱ってたね・・・」

「あのひと・・大丈夫かな・・・」

「イケメンなのにもったいないな・・・・・」

2人は大きなため息をつくとカウンターの後ろの席にどっかりと座った



外のベンチに座ってハンギョンはソフトクリームを舐める

テーブルの上にちょこんと座ったチョルはソフトをよこせと鳴く

「今あげるから・・待って・・」

待たされてあせったチョルは

ソフトクリームに顔をぶつけてしまった

ふんにぁ~!!!!!

あわててハンギョンはハンカチでチョルの顔を拭いてあげる

チョルが小さな舌でソフトクリームをペロペロなめる

そんな姿をデレデレしながらハンギョンは見つめていた

子猫の姿をしているのに

ハンギョンの頭の中の恋愛フィルターが

人間の姿のチョルにちゃんと変換してくれている

(ハン♪美味しい♪ ありがとう~♪)

日没まであと少し・・・

チョルが人間の姿になるまで・・・あと少し・・・

ソフトクリームを美味しそうに舐めているチョルを見て

我慢できなくなったハンギョンは

ソフトクリームを取り上げると

クリームだらけのその口に優しくキスをした

一瞬何が起きたのか分からなかったチョルは

目を大きく見開いてポカンとしている

そして急に恥ずかしそうに顔を伏せた

「チョル・・・早く人間の姿になって・・」ハンギョンは耳元でささやく




そんなハンギョン達を見つめている小さな影がふたつあった・・・

「おかーさん」「しゃん」

「あのおじちゃん猫と話してるよ」「はなちしてるよ」

「あのおじちゃん・・とくしゅのうりょくあるのかしら」

「ヒョク・・とくちゅののうりょくって何?」

「ドンはバカだから知らなくていいのっ」

「ドンばかじゃないもん・・・・」

「おかーしゃん・・・ヒョクが・・・ドンをばかって言った~」

幼稚園くらいの双子の子供がハンギョン達から離れていく

「ああいう人は何するか分からないから・・・近付いちゃだめよ」

母親に言われて双子は元気に返事をする

「はーい」「はーい」

「あのおじちゃん・・猫と話できていいね・・僕も話したい」

「ドン・・あのおじちゃん猫とチューしてたよ」

「へんたい?」

「猫とチューはへんたいだね」




幼稚園児に変態と言われようが

ハンギョンはチョルと幸せな時間を過ごしていた


もうすぐ日が暮れようとしていた・・・釜山にもあと少しで到着する・・・

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