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2014.01.13 magician
前のブログにも書きましたが

なんと久々に風邪で寝込んでしまいました

その時に見た夢の一場面からこの話を思いつきました

良かったらお付き合いください

[magician]

magicianとは広い意味合いでは

奇術師、手品師、魔術師、魔法使い のことを示す





空はどんよりと曇っていて今にも雨が降りそうな天気だった

ヒチョルは家の前に座ってぼんやりと空を見ていた

「ヒチョル~俺んちで遊ぼう」

振り向くとえくぼの可愛いヒチョルと同じくらいの男の子が手を振っている


「イトゥク・・」

「雨も降りそうだしさ・・母さんが働きに行って留守だから

ヒチョルと一緒の方が母さんも安心だっていうし・・ね」



ヒチョルとイトゥクは7歳になったばかりで家も隣同士の幼馴染だった

2人とも父親がいなく母子家庭に育っていたが

病気で父親を亡くしたイトゥクと違い

最初から父親という存在のないヒチョルは母親からネグレクト(育児放棄)されていた


家に入れずに外にいるときは大概母親が男を家に引き入れている時だった

見かねたイトゥクの母親が「一人も二人も一緒だから」と

ヒチョルの世話もしてくれていた


「あらヒチョルくんもお手伝いしてくれたのね・・ありがとう」

イトゥクの母親が帰宅してきた時に

小さな子供二人で掃除をしたような跡があったので

イトゥクの母親は笑顔でヒチョルを抱きしめてくれた

母親に抱きしめられる事のないヒチョルは恥ずかしさに頬を赤く染めていた


「お母さん・・これ何?」

イトゥクが野菜の包まれていたチラシを見て興味を示して聞いてくる


「なんかこの町にサーカス団がくるらしいのよ

市場でねタダの入場券をもらったから・・よかったら2人で行ってらっしゃい」

チラシには町の広場で、サーカスが1日だけ行われると書かれていた


「サーカスってなあに?」

「お母さんも子供の頃に見たきりだから・・動物が出てきたり

なんかいろんなワクワクするような楽しいことを見せてくれる人たちのことよ」


「わーい明日・・ヒチョル一緒に行こうね」


「ヒチョル君・・スープ良かったら飲んでいってね」

イトゥクの母親から暖かいスープの器を貰って

ヒチョルはそれを美味しそうに飲んだ

家に帰っても食べるものなどほとんどなく

いつもおなかをすかせているヒチョルにとって

野菜くずしか浮いてないスープでも最高のご馳走だったのだ


まだ学校に入学していないヒチョルは1日が長かった

たまたま機嫌のいい母親がお金や食べ物を与えてくれると

次はいつもらえるかわからないから

大事にそれを隠しながら食べて飢えをしのいでいた


今日はイトゥクとサーカスを見に行く日

ヒチョルは着ているものはたまにしか洗濯していないし

お風呂も見かねたイトゥクの母親に入れてもらう位で

野良猫のような汚い子供だった

汚いと入場させてもらえないのかと心配になり

イトゥクの家の残り湯で体を拭かせてもらって

なんとか見られる姿となって2人で広場に行った


平日の昼間なのにテントの中はたくさんの見物客であふれていた

ヒチョル達は小さいからだを上手く使って一番前の席をとることができ

そこで座ってサーカスを楽しむことができた

動物たちのパレードや空中ブランコが終わり

次に大きな箱が舞台に出てきた


シルクハットをかぶり手にはステッキを持った

見目麗しい男性が次々に手品を見せ始める

ヒチョルは男性の手から花や鳩が飛び出してくるのを

眼を輝かせながら見つめていた

「あの人魔法使いかな・・すごいよね」

隣のイトゥクも興奮してヒチョルの手を握りしめる



「さて・・・次の出し物はお客様に協力してもらいたいのですけど」

男性が優しくほほ笑みながら周囲を見回すと

会場の女性たちのため息が聞こえてきた



この魔法使いのお兄さん・・・きれいな顔している・・

ヒチョルがぼうっと見つめていると


「はい・・そこの君・・ちょっと手伝ってくれる?」

突然ヒチョルが指名されて

イトゥクともどもビックリして立ち上がってしまった


「眼の大きい君のほうね・・ちょっと来て」


男性のほほ笑みにつられるように

ヒチョルが舞台に向かってのろのろと歩き出した


「はいこの箱に入ってね」


箱に入れられたヒチョルは

箱ごと胴体を切られたり

手を切られたり

挙句の果てにはヒチョルが入っていた箱が空っぽで

居なくなってしまい

イトゥクは「ヒチョルがいない~」と泣き叫んでしまった



舞台の男性はくすくすと笑いながら

箱をもう一度元に戻すと

「そこの坊や泣かないで・・君のお友達はちゃんといるから」と言いながら

箱を開けた


「ヒチョル~!!!!!」

ヒチョルが泣きそうな顔をして箱の中に座っている

ちゃんと胴体も手もつながっていた


会場は拍手喝さいの嵐だった



最後にイトゥクも舞台に乗せられて

泣かせてしまったお詫びと

男性から二人にお菓子の沢山入った袋を渡された


「イトゥクごめんね・・驚いたね」

「ヒチョルがバラバラになったと思って怖かったよ」

「お菓子たくさんもらったね」

「早く帰ってお母さんと一緒に食べようね」

いつの間にかヒチョルの左手の薬指に痣が出来ていた

イトゥクは不思議に思ったが深く考えずにそのままにしてしまっていた






サーカス団が来てから10年が過ぎた

イトゥクとヒチョルは17歳の高校生となっていた

さすがにこの歳になるとお互いの家庭環境の事が分かってきて

昔の様に兄弟同様に過ごすことはなくなっていた

イトゥクは勉強に専念して進学校に進み奨学生となっていた

ヒチョルは相変わらずネグレクト状態だったが自分でお金を稼ぐようになった

女の子のような美貌にますます磨きがかかり、その美貌を利用して体を売っているという

近所の噂も絶えることがなかった



そしてまたサーカス団がこの町に来るというチラシがイトゥクの元に配られた




楽しかったけど、ヒチョルが箱の中からいなくなるという衝撃が大きすぎて

イトゥクにとってサーカスはトラウマになっていた


チラシを手にしたイトゥクは玄関先で会ったヒチョルに声をかけた

「久しぶり・・ヒチョル・・・」

「お前・・俺なんかと話しているとお前も男娼だと噂されるぞ」

ヒチョルはそう言うと自虐的にほほ笑む

「俺は・・ヒチョルの友達だよ・・昔と変わらないから・・

それよりこれ・・またサーカスが来るんだって・・・懐かしいね」


イトゥクはそういうとチラシをヒチョルに見せる

ヒチョルは驚いて顔をゆがめるとチラシをイトゥクから奪い取って

まじまじとその紙を見つめていた


「ヒチョル・・・欲しかったらあげるよチラシ・・行くの?」

ヒチョルは何も言わずに顔をゆがめると黙って家に入って行った





10年前に出会ったmagicianの男


舞台に上がった時に

「まだ小さいな・・もう少したって大人になったら迎えに来るからね」

そう耳元でささやかれ、指にキスをされた

そして気づくとキスをされた左手の薬指に星形の痣が残った


それ以来

時々ヒチョルの夢にその男は出てくるようになった

そしてヒチョルは名前も知らないその男に恋をするようになっていた



生活のために体を売って日銭を稼いでいる自分に

とても汚らしい後ろめたい気持ちがあったけど

もう一度あのmagicianに会いたい・・・・・

会ってどうするわけでもないけどただ会いたい・・・

ヒチョルはそんな気持ちを持ってサーカスを見に行く事にした



「なんでイトゥクも付いてくるんだよ」

「いいの・・サーカスのトラウマ持ってるから

この際トラウマを無くしてしまおうって行くの」

「俺と一緒にいるとお前までゲイだと思われるぞ」

「ヒチョルと友達なのは昔からだもん平気だよ」


二人はそんな軽口を叩きながらサーカスのテントに入っていく

今回も一番前に陣取った


子供の頃に味わったように

ワクワクドキドキしながら楽しんだ

そしてmagicianが出てきていろいろな手品を見せてくれる

会場は最高に盛り上がっていた

いよいよ昔イトゥクを泣かせた人体切断のマジック

舞台の男性はヒチョルを指名した

ヒチョルは笑顔でそれに答えて舞台に上がって行った


箱が切断されていく

ヒチョルの入った箱が開けられて中には何もない

もうイトゥクは泣くことはなかった

これがトリックだと知っていたから

でも

それでも

心の中にモヤモヤと嫌な思いがしてくる

そして箱が全部つながってふたが開けられると・・・




中から出てくるはずのヒチョルはいなかった

けばけばしい化粧のピエロが出てきた


そして今まで手品を見せていたmagicianの姿も忽然と消えていた


客はこれも演出だと思って拍手喝采の嵐となった



ただ一人イトゥクを除いて・・・・





サーカスの出し物がすべて終わって客たちがみんな楽しそうに帰っていく

ヒチョルが消えたのも演出だと思って誰も不思議がらない

ぼんやりと座ったままのイトゥクの元にピエロが手紙を届けてきた


ヒチョルの字で

『今まで俺と友達でいてくれてありがとう

俺は愛する人と一緒に行きます』とだけ書いてあった


イトゥクは手紙を握りしめながらいつまでも涙を流していた












「おじいちゃん・・なんでサーカス嫌いなの?」

イトゥクは70歳となり孫たちに囲まれて静かな日々を過ごしていた

「小さいときにね・・友達が消えちゃう手品に驚いたんだよ」

「おじいちゃん・・それって今はイリュージョンって言うんだよ」

「ねえねえテレビで世界一のイリュージョンやってるよ~」

イトゥクが初めてサーカスを見に行った時と同じ歳になった孫が

テレビのスイッチを入れながら大騒ぎをしている

「お父さん・・このイリュージョンの人すごいんだって~

世界一の腕を持っているらしいわよ・・超イケメンでね~

助手の人もすっごく綺麗なの」

キッチンから飲み物を持ってきたイトゥクの娘が楽しそうに話してきた

テレビではラスベガスで大成功を収めた舞台の模様を映し出していた

かなり大がかりのイリュージョンらしく

昔イトゥクがサーカスのテントで見たのとまったく規模が違っていた


「きゃあ~やっぱりカッコいいわぁ~ミスターハンギョン」

ハンギョンと呼ばれたイリュージョン師の顔がアップになる


え?

イトゥクはどこかで見たことがある気がした


「ほらほら箱に入る助手の人・・見て~男なのにすっごく美人」

娘の騒ぐ声がイトゥクの耳元でしている・・が

イトゥクの耳には何も聞こえてこなかった



ヒチョル・・・・


テレビの画面に映し出されている美少年はどう見てもヒチョルだった

イトゥクと最後に分かれた17歳の姿のまま・・・

そしてその美しさは当時よりも遥かに磨きがかかっていた


(愛する人と一緒に行きます)

ヒチョルの残した手紙が思い出される



ヒチョル・・・今・・幸せなんだね・・・

そしてあのmagicianは・・やっぱり魔法使いだったんだ



イトゥクの瞳から涙が一滴ながれた


「おじーちゃん!!!!!泣いてるよ!!!!」

「やだ~お父さんたら・・あれはトリックなんだから

いい大人が知ってるでしょう」

孫と娘がイトゥクを心配して抱きしめてくれる



「うん・・・知ってるよ・・・あのmagicianはね

本当の魔法使いなんだよ」


イトゥクは泣きながら嬉しそうにほほ笑んでいた










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